山月記の単語帳
Sangetsuki — The Moon over the Mountain
中島敦の名作「山月記」。詩人として名を残そうとして、虎になってしまった李徴の物語から、人物・地名・印象的な言葉を集めました。
- 80 語
- パズル: 第1回
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ア行
暁アカツキふつう
カギ李徴との別れのころ近づいた夜明け
解説李徴と袁傪の別れが近づくころの夜明けを指します。再会が夜中に始まり、暁で終わる構成が印象的です。
異類イルイふつう
カギ人間ではない生き物となった自分の身
解説李徴が自分の変化を名づける語です。「今や」と言うことで、人間だった過去との断絶が強調されます。
兎ウサギやさしい
カギ虎となった李徴が思わず捕らえた小動物
解説虎となった李徴の行動に出る動物です。見てすぐ捕らえる場面で、人間の意志より獣の反応が前に出ます。
袁傪エンサンやさしい
カギ温和な監察御史、主人公の旧友
解説李徴とは同じ年に進士へ及第した人物です。嶺南への道中、林の中で虎になった李徴と再会し、温和な性格で彼の告白を受け止めます。
丘オカやさしい
カギ別れの後、袁傪一行が上から振り返った所
解説別れの後、袁傪の一行が振り返る場所です。丘の上という距離が、李徴との決定的な隔たりを際立てます。
臆病オクビヨウやさしい
カギ「__な自尊心」に入る性質語
解説「臆病な自尊心」の修飾語です。強そうな自尊心に弱さを示す語が付くため、李徴の内面の矛盾が見えます。
温和オンワやさしい
カギ峻峭な李徴と衝突しなかった袁傪の性格
解説袁傪の人物説明に出る語です。李徴の峻峭さと対置され、二人の関係を読む手がかりになります。
カ行
虢略カクリヤクむずかしい
カギ退官後の李徴が創作にふけった故郷
解説李徴が官を退いた後、故山として帰った地名です。ここで世俗を離れ、詩作にふける生活へ移ります。
下吏カリむずかしい
カギ低位の役人。李徴が嫌った立場
解説下級の役人のことです。李徴が大官に仕える屈辱を避け、詩家の名を選ぼうとした対比に使われます。
瓦カワラやさしい
カギ李徴が伍することもできぬと言った無価値の喩え
解説李徴が凡庸さを表すために出す比喩です。宝の「珠」と並ぶことで、価値の落差が大きく見えます。
眼光ガンコウふつう
カギ詩作に苦しむ李徴で鋭く輝いていたもの
解説目に宿る光を表す漢語です。詩作に苦しむ李徴の描写で、目の鋭さだけが強調されています。
監察御史カンサツギヨシむずかしい
カギ袁傪の官職。不正を調べる役
解説袁傪の官職で、官吏の不正を監察する役です。李徴の旧友が公務の途上にいる設定を支えています。
漢詩カンシやさしい
カギ李徴が即興した七言律の中国古典韻文
解説李徴が即席で作る詩の形式です。七言律詩と示されるので、中国古典詩の型で思いを述べたことが分かります。
官吏カンリやさしい
カギ主人公が生活のため再びなった地方の役人
解説役人のことです。李徴は一度官を退いた後、生活のため地方官吏に戻り、理想と現実の差がはっきりします。
記誦キシヨウむずかしい
カギそらで覚えていること。李徴の旧作にも
解説李徴が旧作を袁傪に伝える方法です。紙を見るのではなく、覚えている詩を書き取らせる場面に関わります。
帰途キトふつう
カギ李徴が袁傪に通るなと頼んだ復路
解説袁傪が戻る道を指す語です。「途」は道の意で、李徴が復路を避けるよう頼む場面で使われます。
飢凍キトウむずかしい
カギ食糧不足と寒さで苦しむこと
解説「飢」は飢え、「凍」は寒さに苦しむことです。李徴は妻子が道塗でそうならぬよう、袁傪に願います。
叢クサムラやさしい
カギ獣の李徴が潜み、姿を見せなかった茂み
解説虎となった李徴が出入りし、語る間も身を隠す場所です。姿を見せないことで、袁傪との緊張が続きます。
炯々ケイケイむずかしい
カギ李徴のまなざしが鋭く光るさま
解説目が鋭く光るさまを表します。「炯々」は同じ字を重ねた形で、李徴の眼光の強さを際立たせます。
獣ケモノやさしい
カギ人間の心を、その習慣が埋もれさせる存在
解説李徴が人間の心との関係で恐れる存在です。習慣が心を埋もれさせる、という形で変化の進行を語ります。
狷介ケンカイふつう
カギ主人公の、人と打ち解けない気質
解説李徴の性格を示す語で、自分の考えを守り人と打ち解けないことです。冒頭の人物紹介で、後の苦悩の下地になります。
江南コウナンふつう
カギ主人公が若くして尉に任じられた地方
解説李徴が若くして尉に任じられた地方です。「尉」は地方の警察を担う官で、詩人志望の前に官歴があったと分かります。
故山コザンむずかしい
カギ官を退いた李徴が戻った虢略の地
解説「故山」はふるさとのことです。李徴が官を退いて虢略へ帰る場面で、役人の道を離れたことが分かります。
故人コジンふつう
カギ亡者の意ではなく、昔からの知己
解説李徴と袁傪の関係を示す語です。ここでは現代語の「亡くなった人」ではなく、古くからの友人を意味します。
古譚コタンむずかしい
カギ本作が初出時に掲げられた総題
解説『山月記』は1942年、雑誌『文學界』に「古譚」という総題のもとで発表されました。中国などの古い話に材をとった作品群の題です。
刻苦コツクむずかしい
カギ「敢て…磨こうともせず」の伏せた語
解説苦労して努力することです。「磨こうともせず」とともに、李徴が才能を鍛え切れなかった点を表します。
虎榜コボウむずかしい
カギ科挙合格者を掲げる札
解説科挙の合格者を掲示する札です。「名を虎榜に連ね」は、李徴が若くして試験に通ったことを示します。
サ行
才穎サイエイむずかしい
カギすぐれた知をもつこと。冒頭は博学○○
解説冒頭で李徴を形容する語です。才能の高さが早く示されるため、後の挫折との落差が際立ちます。
妻子サイシやさしい
カギ李徴が袁傪に世話を頼んだ故郷の家族
解説李徴が袁傪に頼み事をする場面に出ます。「妻」と「子」をまとめて指し、故郷への未練がにじむ語です。
さだめやさしい
カギ李徴が生き物は受け取って生きると語る運命
解説李徴が生き物全体に広げて語る運命観です。理由が分からないものを受け取る、という受動性が要点です。
残月ザンゲツふつう
カギ林を進む頼りとなった、夜明けの天体の光
解説林中を進む一行の頼りになる光です。夜明けの空に月が残るため、別れの場面に淡い明るさを与えます。
山月記サンゲツキやさしい
カギ中島敦の代表作、虎に変じた男の物語
解説中島敦の代表作で、高校の国語の教科書でもよく読まれます。題名の「山」と「月」は、虎となった李徴が月を仰ぐ結末の情景にもつながります。
詩家シカふつう
カギ李徴が死後百年に名を遺そうとした立場
解説詩人のことです。李徴は役人として屈するより、死後百年に詩家の名を残すことを望みました。
詩業シギヨウむずかしい
カギ妻子より己の創作活動を案じたと李徴が自嘲
解説李徴が自嘲する場面で出る語です。妻子より創作を案じたと語るため、彼の価値の置き方が見えます。
詩作シサクやさしい
カギ李徴が退官後、ひたすらふけった営み
解説李徴が官を退いた後に打ち込んだ、詩を作ることです。彼の望みが官途より詩名に向いたことを示します。
詩人シジンやさしい
カギ李徴が目指し、死後百年に名を遺そうとした者
解説李徴が名を残そうとした姿です。「死後百年」と時間を伸ばして語るほど、名声への願いが大きいと読めます。
自尊心ジソンシンやさしい
カギ虎化の一因、「臆病な__」
解説李徴が虎化の原因として挙げる「臆病な自尊心」の中心語です。自分を高く見る心が、弱さと結び付きます。
自嘲ジチヨウふつう
カギ己をあざけること
解説李徴が自分を笑ってくれと言う場面で、袁傪は彼の青年時代の自嘲癖を思い出します。昔からの癖として示されます。
羞恥心シユウチシンやさしい
カギ虎化の一因、「尊大な__」
解説「尊大な羞恥心」として、李徴が自分を虎にした原因に数えます。恥じる心に「尊大」が付く逆説が重要です。
峻峭シユンシヨウむずかしい
カギ李徴の性情。きびしくけわしいこと
解説きびしく、けわしい性質を表す語です。李徴の性情を示し、人づきあいの難しさを考える手がかりになります。
商於シヨウオむずかしい
カギ旧友が嶺南行きの途中で宿をとった土地
解説袁傪が嶺南へ向かう途中で宿をとった土地です。李徴との再会場面に入る前の、道中の現在地を示します。
峭刻シヨウコクむずかしい
カギ李徴の顔つきがこうなった、とげとげしいさま
解説きびしく、とげとげしいさまです。李徴の容貌に用いられ、詩作の苦しみが顔つきに及んだことを示します。
汝水ジヨスイむずかしい
カギ主人公がほとりに泊まり発狂した川
解説李徴が旅先で宿った川です。その夜の出来事が、官吏としての道からの決定的な離脱点になります。
人虎伝ジンコデンふつう
カギ唐代の怪異小説。『山月記』のもと
解説『山月記』のもとになった唐代の伝奇小説です。題名からも、人が虎になる設定の源流がうかがえます。
進士シンシふつう
カギ主人公と旧友が同年に及第した科挙の最終合格者
解説科挙の最終合格者を指します。李徴と袁傪が同年に及第したため、二人は才能を認められた同世代として対比できます。
性情セイジヨウふつう
カギ各人の中の猛獣に当たるもの
解説李徴の言葉で、各人の中の猛獣に当たるものとされます。虎は外の怪物でなく、人の内面を考える比喩にもなります。
賤吏センリむずかしい
カギ主人公が甘んじるのを潔しとしなかった低い役
解説李徴が自分の地位として受け入れがたいとした低い役です。この語から、職への不満と自己評価の高さが読めます。
即席ソクセキやさしい
カギその場ですぐ作ること。李徴の一首もこれ
解説李徴が現在の思いを詩にする方法です。旧作の書き取りとは別に、その場で作る詩も示されるのがポイントです。
尊大ソンダイやさしい
カギ「__な羞恥心」に入る語
解説「尊大な羞恥心」の修飾語です。恥ずかしがる心に傲慢さを重ねる言い方で、李徴の複雑な自己意識を示します。
タ行
第一流ダイイチリユウふつう
カギ袁傪が李徴の素質に認めた最高級
解説袁傪が李徴の詩を評価する場面の語です。素質は高いのに作品には不足がある、という微妙な評です。
珠タマやさしい
カギ李徴が自分は違うと恐れ、磨かなかった宝石
解説李徴の自己評価を語る比喩です。磨く努力を避けた理由が「珠でない恐れ」と結びつくのが要点です。
勅命チヨクメイふつう
カギ旧友が受けて嶺南へ赴いた天子のおおせ
解説天子の命令を表す語です。袁傪の嶺南行きは私的な旅でなく、公的任務として物語に置かれています。
陳郡チングンむずかしい
カギ監察御史となった旧友の出身地
解説袁傪を紹介する肩書きに添えられる出身地です。「監察御史」と並ぶため、人物の公的な身元を示します。
月ツキやさしい
カギ題名にもある天体。最後は白く光を失う
解説題名にも含まれる象徴的な語です。最後に虎が光を失った白い月を仰ぐ場面で、余韻を強めます。
露ツユやさしい
カギ「山も樹も月も…も」の伏せた語
解説「山も樹も月も露も」と並べられる自然の語です。夜明け近い場面の冷たく澄んだ空気を感じさせます。
弟子デシふつう
カギ孔門の門下生を描く中島敦作品
解説孔子の弟子・子路を主人公にした中島敦の小説です。題名は一般的な「弟子」ですが、師の孔子との関係が物語の中心になります。
天宝テンポウむずかしい
カギ唐の玄宗期の年号で、冒頭に出る
解説冒頭の時代設定に使われる唐・玄宗期の年号です。年号を置くことで、物語は中国の歴史世界に結び付けられます。
慟哭ドウコクふつう
カギ叢の中から聞こえた激しい泣き声
解説叢の中から聞こえる声の描写です。姿が見えないまま泣き声だけが届く点が、場面の痛切さを増します。
同年ドウネンふつう
カギ同じ年に進士となった科挙の仲間
解説科挙で同じ年に及第した仲間をいいます。年齢が同じという意味ではなく、李徴と袁傪の縁を示す語です。
同輩ドウハイふつう
カギ李徴が下で命令を受ける身となった昔の仲間
解説同じ地位の仲間を指します。「輩」は仲間の意で、李徴がかつての同輩の下で働く屈辱を示します。
虎トラやさしい
カギ李徴が姿を変えた獣
解説李徴が変わってしまった姿です。人間の声で語る存在として描かれ、人と獣の境目が授業の重要点になります。
鈍物ドンブツふつう
カギ李徴がかつて歯牙にもかけなかった愚者
解説愚かで鈍い人を指します。「物」とありますが人をいう語で、李徴が同輩を見下していたことが分かります。
ナ行
中島敦ナカジマアツシやさしい
カギ『山月記』『李陵』などの作者
解説『山月記』の作者です。1909年生まれで、短い生涯に『李陵』『名人伝』『弟子』なども残しました。
ハ行
博学ハクガクやさしい
カギ広く知識に通じること。冒頭の評語
解説広く学問に通じていることです。冒頭の「博学才穎」は、李徴がただの奇人でなく優れた才人だったと示します。
白露ハクロふつう
カギ明け方、地に滋く置く光るしずく
解説明け方の地面を描く語です。「地に滋く」とあるので、露の多さまで視覚的に示されています。
発狂ハツキヨウふつう
カギ汝水のほとりで李徴が陥った精神の異常
解説李徴が姿を消す直前の出来事です。場所が汝水のほとりと示され、変身前の異変として記憶されます。
文名ブンメイむずかしい
カギ李徴が得られず官吏に戻った、著作への評判
解説李徴が得られなかった文章上の名声です。生活のため官吏に戻る流れと結びつき、理想と現実の差を示します。
咆哮ホウコウふつう
カギ最後に月を仰いだ虎があげた声
解説結末の虎の声を表す語です。月を仰いで二声三声とあるため、最後の印象を聴覚で残します。
マ行
名人伝メイジンデンふつう
カギ弓の達者・紀昌を描く中島敦作品
解説中島敦の小説の一つで、紀昌という弓の名人を扱います。題名に「伝」があり、人物の話を伝える形がうかがえます。
猛虎モウコやさしい
カギ叢から躍り出た、たけだけしい獣
解説たけだけしい虎を表す語です。商於を発った袁傪の一行の前に、叢の中から躍り出て襲いかかろうとした虎の描写に使われます。
猛獣使モウジユウツカイふつう
カギ荒い動物を操る者。李徴は誰でもそうと言う
解説李徴が人間一般を語る場面の比喩です。「誰でも」と広げる点が、彼だけの問題でないと示します。
ヤ行
山ヤマやさしい
カギ題名で月の前に置かれる高い地形
解説題名を構成する語です。「月」と並ぶことで、自然の景色が作品全体の印象を形づくります。
容貌ヨウボウやさしい
カギ詩作に苦しむ李徴で、とげとげしくなった顔かたち
解説顔かたちをいう語です。李徴の容貌が峭刻になる描写では、詩作に苦しむ様子が外見にも表れています。
ラ行
李徴リチヨウやさしい
カギ発狂して虎となった本作の主人公
解説冒頭で「隴西の李徴は博学才穎」と紹介されます。詩で名を残そうとする志が、作品全体の軸になります。
李陵リリヨウふつう
カギ漢の将軍と司馬遷・蘇武を描く中島敦作品
解説中島敦が中国の歴史を題材にした小説の一つです。匈奴に降った将軍・李陵と、司馬遷、蘇武の三人の生き方を描きます。
林中リンチユウふつう
カギ木立の内側。残月のもと一行が通過
解説一行が通る場所の描写です。残月の光、白露、冷風と結びつき、夜明け前の情景を作ります。
嶺南レイナンふつう
カギ天子のおおせを受けた旧友の使い先
解説袁傪の任務の目的地として出る地名です。彼は勅命を受けて向かっており、再会は公務の途中に置かれます。
冷風レイフウふつう
カギ別れの場面、夜明け前の林を吹き渡る寒い気流
解説別れの場面で林の中を吹く風です。視覚だけでなく肌の感覚を加え、夜明け前の寒さを印象づけます。
隴西ロウサイふつう
カギ冒頭で主人公の出身地とされる地
解説冒頭「隴西の李徴は博学才穎」に出る地名です。人物名より先に出身地が示され、中国史伝風の始まりになります。
碌々ロクロクむずかしい
カギ李徴が「瓦に伍する」こともできぬとしたさま
解説李徴が自分の生き方を否定する語です。「珠」と「瓦」の対比の中で、平凡への嫌悪が強く表れます。